年も暮れ、街も慌ただしくなってくる頃、女の子達も胸の高揚を隠せない。
12月24日・・・・ 「クリスマス・イヴ」だ。
相手を想いあう2人が、その気持ちを確かめあう日。
自分の中に募る想いをもっと確かなモノへと成就させる事の出来る日。
そして、少女を女性へと変える、「特別」な日・・・・
「えっと・・・・、ここはこうやって・・・っと・・・」
独り言を呟きながらイヤリングをする少女。 そのその仕草はどこかぎこちない。
「満空(みつあき)ったら余計な事を・・・・」
だが、言葉とは裏腹にどこか嬉しそうな感じを隠せないでいた。
満空とは彼女、紗奈の彼氏である。
とはいうものの、正式に付き合っている訳ではない。
友達付き合いの延長でペアになった・・・・そんな間柄であった。
それ故に、紗奈は想いを直接言葉に出来ずにいたのだ。
端から見れば、どう転んでもカップルなのだが、当人達は「友達」と「恋人」の
境界線を引けずにいた。
それが、紗奈の悩みの種の一つでもある。
「確かに、誕生日にプレゼントとしてイヤリングをもらったけどさ、
『紗奈(さな)は普段アクセサリーつけないんだから、たまにはつけて見せてよ。』
なんて・・・。
あいつ・・・・今日が私にとって『特別な日』だって事、
知ってるのかなぁ・・まさか・・・ね。」
紗奈はこの日、自分の想いをちゃんと伝え、以降、正式に付き合うつもりでいた。
もちろん、満空がOKすれば・・・の話だが。
紗奈は童顔で、勉強だってそんなに出来るわけでもない。
料理やスポーツに関して同様で、けっして上手ではなかった。
「素直で明るい子」
それが紗奈の、唯一といっていいほどの取り柄だった。
イヴの夜は、一年でたった一日、取り柄の少ない自分に勇気が出せる、
そんな気になれる。
そんな日なのだ。
「ん、これでよしっ、と。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う〜ん、馴れてないからだろうけど、なんか・・耳、変な感じ・・・」
頭を左右に小さく振って、揺れるイヤリングを、普段の自分とは違う、
鏡の中の自分をみつめながら呟いた。
そうこうしているうちに、部屋に流れていたラジオが6時を知らせた。
「あぁっ、いっけなぁぁい!! もう、約束の時間に遅れちゃうよぉ!!」
紗奈は、濃いワインレッドのコートに袖を通すと、小走りに待ち合わせの
場所へと急いでいった。
必ずしも、自分の思惑通りのフィナーレを迎える事が出来る訳ではない。
だが、「最高の記念日」にする為に、自分に出来る、可能な限りの演出を
するのだ。
良かれ悪かれ、「心」に残る日になる事を信じて・・・・
願わくば、全ての「純粋な愛する心」に、幸あらん事を・・・・
メリー・クリスマス・・・